Case

事例紹介
アイロボットジャパン合同会社

“経営目線”と“現場知識”があるコンサルティングだから、「あるべき姿」からスムーズに落とし込みができる

物流における「考え方の軸」を示してくれるから、納得感があり、経営陣にも話しやすい
オペレーション部 ロジスティクスマネージャー
土肥章敬
クライアントの視野が狭くならないような、広い視野をもった提案を心がけています
株式会社 鶴 ディレクター
皆川寛俊
 部屋を美しく保ち、掃除の負担を減らしてくれる、ロボット掃除機「ルンバ」。ゴミが多い場所を検知してくれる、自動で充電ができるといった便利な機能も、多くの方に親しまれているポイントと言えます。そんなルンバを開発しているのは、アメリカ・マサチューセッツに本社を構えるアイロボット社です。

 株式会社鶴では、4年前からアイロボット社の日本法人である、アイロボットジャパン合同会社の物流に関するコンサルティング支援を行っている。そこで今回は、アイロボットジャパン合同会社のオペレーション部ロジスティクスマネージャーの土肥章敬(どひ・あきのり)さんと、弊社コンサルタント皆川寛俊(みながわ・ひろとし)で、これまでのコンサルティング内容を振り返り、アイロボットジャパンの物流の未来について語る。

物流で重要となる「キャパシティ管理」と「経営視点」

――まずは、アイロボットジャパンさんの事業について教えてください

土肥 ロボット掃除機「ルンバ(Roomba)」や、床拭きロボット「ブラーバ(Braava)」、掃除と床拭きどちらの機能も兼ね備えた「ルンバ コンボ(Roomba Combo)」、遊びながらプログラミングの勉強ができる「ルート(Root)」の販売を行っています。

――土肥さんの所属するオペレーション部門の役割にはどんなものなのでしょうか?

土肥 オペレーション部門は、需要予測、供給、セールスオペレーションなどと並ぶ部門の一つで、工場で出来上がった商品を倉庫に集約し、そこからお客様にお届けするまでの管理をしています。具体的な管理内容としては、物流に関する「コスト」「品質」「納期」をいかに最適なものにするかですね

――数あるお掃除ロボットのなかで、アイロボットさんの「ルンバ」や関連商品が、常にトップシェアを獲得している理由について教えていただけますか?

土肥 まずは「ルンバ」という知名度の高さ。ロボット掃除機よりも、「ルンバ」製品名で検索される製品というのは少ないと思います。もう一つは徹底的なカスタマーサービスです。使い方や壊れたときの対応にも力を入れることで、より多くお客様に安心してルンバを使ってもらえたらと考えています。

――ありがとうございます。今回、鶴にコンサルティングを依頼するに至った経緯についてもうかがえますか?

土肥 日本法人の立ち上げから売上を伸ばしおりますが、成長に伴っていろいろな課題出てきました。一つは、キャパシティの問題です。注文が増える中で、倉庫のキャパシティや配送システムなどをどのようにアップデートしていくかという課題が常にあります。あとは、経営目線で物流を見ることの難しさ。アイロボットジャパンでは、中期経営計画を立てているのですが、それに沿った物流の管理をしたいという思いから鶴さんに依頼をしました。

しっかりとした「切り口」があるから、未来像を描きやすい

――数あるコンサルティング会社のなかから鶴を選んだ理由について教えてください。

土肥 経営的な目線からのコンサルティングができ、かつ物流についても精通している点ですね。物流コンサルの場合、倉庫の最適化など「点」については得意かもしれませんが、物流という流れのなかで全体を見ることが難しいと思います。一方戦略系のコンサルでは、全体や経営視点での考え方は良いものの現場についての知識が不足している場合が多いんです

鶴さんの場合は、どちらも持ち合わせているだけでなく、我々と同じ成長段階の企業が大きくなっていく現場を経験されたコンサルタントの方もいらっしゃり、周りの評判も良かったので、安心してお任せすることができました。

――皆川さんは、鶴の強みについてどうお考えでしょうか?

皆川 土肥さんのお話にもあったように、物流会社やシステム会社出身のコンサルではなく、経営的な目線からアドバイスができるのが強みだと感じています。また、事業会社の出身でもあるので、アイロボットジャパンさんがどんなところに悩んでいるのか良くわかりますし、成長著しい企業において、事業成長を加速する物流業務としてどのような絵を描いていくかなどの支援ができると感じています。

――実際にコンサルティングをはじめたのは、4年前からだと伺いましたが、当時はどのような状態で、どんな未来像を描きながらコンサルティングをはじめられたのでしょうか?

皆川 3,4年前の成長角度から今後のアイロボットジャパンさんの成長を考えるとキャパシティが足りないなと感じました。未来像としては、キャパシティをあげつつ、コストレベルを下げて新しいアイロボットジャパンの物流のカタチを作れたらと思いました

――どんなステップでプロジェクトを進めていったのでしょうか?

土肥 まずは、拡張性やコストの観点から千葉にあった倉庫を栃木に移転することにしました。それが、20201月ですね。2022年の4月には、関西圏のお客さまに配送しやすくするために、大阪に倉庫を作りました。

――なぜ、栃木に倉庫を移転したのでしょうか?

土肥 もともと、千葉の倉庫は、都心に近かったためコストも高く、トラックの手配が難しいという難点がありました。日までに配送をお願いします」「その日程は、難しいです」といった本来必要のない調整のためのコミュニケーションが多く、車両が手配できずにお客さまにも迷惑がかかってしまい、会社の売上にも悪影響が出てしまっていたことが悩みの種した

栃木の倉庫は、多くの家電製品を取り扱っていて弊社とのシナジーも高い新たな取引先に移転してから、コスト面に合わせて、トラックの手配が格段にしやすくなり配送に関するコミュニケーションの負担が減り、売上アップにも繋がったと考えています「物流は、会社の売上を後押しする存在であるべきという考え方がありましたので、個人的にはそれが一番ハッピーでしたね。

――倉庫の移転って大変イメージありますが、そちらについてはいかがでしょうか?

土肥 倉庫移転で物流がストップしてしまうというのはよくあることで…。お客さんに迷惑をかけないためにも、できる準備は全てやりました。皆川さんにも、幅広くご提案いただき、やりすぎるくらい準備をした結果、はじめからトップスピードで倉庫を稼働させることができました。

――2つ目のステップにあたる、大阪第二倉庫は、どんな観点から提案されたのでしょうか?

皆川 日本でビジネスをする上で、避けて通れないのが災害のリスクです。そういった点からみると、複数倉庫があったほうが理想的なのですが、コスト的な問題もございます。アイロボットジャパンさんの場合、関東の倉庫から関西圏やその先に配送するのにかかる費用と、2つの拠点から配送する費用を計算した結果、後者の方が今後メリットが高いと判断し、大阪の倉庫を作るご提案をしました。

土肥 鶴さんの良いところは、物流のあるべき姿を考えるときに必要な「軸」や「切り口」を提供してくれるところだと考えています。倉庫の分散や集中についても、どういう切り口で考えればいいのか分かりやすく示してくれるので、納得感がありますし、物流に詳しくない経営陣に説明をするときも、説得力があったと思います。

――他に「ここも良かった!」と思う点があれば教えてください。

土肥 これは偶然なのですが、大阪の倉庫移転と同じタイミングに、配送会社のコンペも行っており、皆川さんに手伝ってもらいました。その際、アイロボットジャパンの商品の大きさや多さと、配送会社さんが価格を下げやすいポイントを絡めて、お互いにとってとても良いところを提案いただき、結果的に配送コストを2割も下げることができたんです。こういった相場観や、お互いの企業にとってWin-Winとなるポイントを提案くださるところはさすがだな!」と思いました。

プロジェクト全体として、コロナ禍になる前に倉庫の移転できたのも大きかったです。コロナの巣ごもり需要の好影響で、売上が大幅に増加したですが、皆川さんからは、2倍の増加まで耐えられるような提案をいただいていたので、出荷が増えた時もお客さまを困らせること無く、スムーズにお届けすることができました。

――皆川さんが、コンサルティングをする際に大切にしているポイントがあれば教えてください。

皆川 クライアントさんの視野が狭まらないように、多くの選択肢や考え方の切り口を提案することを大切にしています。あとは、私も事業会社の出身として、物流に関して、多くの成功や失敗の体験をしてきました。そういった、経験もシェアして、より良い選択肢を選んでいただけるように心掛けています。

2024年問題やAIの進化のなかで「物流を武器」にできる提案がしたい

――現在は、どんなことをしているのでしょうか?

土肥 これまでは、どんどん突っ走って来て予算も大きくなっていたので、このタイミングでムダなコストをカットし、1年以内に最適な状態にできたらと考えております。

――ありがとうございます。今後のアイロボットジャパンさんのコンサルティングにおいて、鶴に期待することがあれば教えて下さい。

土肥 ニュースで話題になっている、「2024年問題()」やAIの進化にどう適応していくかというのが、今後の物流業界の課題になってくると考えています。そのなかで「どうやって最新の技術を取り入れるか」「どのような計画を作るべきか」といった点をサポートいただけるとありがたいですね。

(※)トラックドライバーの労働環境を良くするため、202441日から、時間外労働時間に上限を設けられ、それにより人で不足や一日に運べる荷物の量が減ってしまうこと。

――皆川さんにも、今後に向けての意気込みをうかがえますと幸いです。

皆川 今のうまく行っている状態をキープしつつ、それを更に高い状態へ持っていき、「アイロボットジャパンの物流がすごいらしい」「アイロボットジャパンの物流は武器なんだ」と言われる未来を一緒に作りたいですね。